落花流水・2
「さん、すっげー綺麗だった」
高砂にビールを注ぎに行っていた丸井先輩は笑う。アルコールのせいか、少し顔を赤くしていた。ジャッカル先輩はデジカメをテーブルに置く。
「仁王はバケツ使ってなかったぞ」
「バケツ?」
不思議に思って訊くと、柳生先輩は微笑んだ。
「高砂のテーブルの下にはバケツが置いてあるんですよ。注がれたものを全部飲むわけにもいかないでしょう」
「あー……そういうものなんスか」
「らしいな。赤也、お前は行かないのか」
真田先輩がグラスを手にして言った。
「あ、行って、こようかな」
さっきの席表の事が頭を過ぎったが、立ち上がる。
「ほら」
幸村先輩に持たされたビールを持って高砂に近付くと仁王先輩はにやり、と笑った。
「今度は赤也か」
「久しぶり、赤也くん」
横に座っているさんは、白いドレス姿。結い上げた髪にティアラ(というのだと柳先輩に教えて貰った)を飾り、重そうなイヤリングとネックレスを着けている。濃い目の化粧もライトの下ではよく映えた。
「さん、お久しぶりッス。じゃ、仁王先輩お一つ」
「おお、すまんの」
グラスに注ぐと仁王先輩は一気に呷った。そして別のグラスを俺に差し出す。
「ほれ」
「え」
「ご返杯」
「あ、ども」
注がれたグラスに口を付けると、赤也、と仁王先輩から呼ばれた。
「何スか」
「二次会、来るよな?」
「あー、ハイ。え、先輩方も行くんスよね?」
「多分」
さんはその遣り取りをじっと見つめていた。その視線が気になって顔を向けるとにっこりと微笑む。
「じゃあ、赤也くん、後でゆっくりね。私、そろそろ行かなきゃみたい」
「うん」
仁王先輩が頷く。
「え、何処か行くんですか」
「お色直し」
「仁王先輩は?」
「新郎は後から行けばいいんじゃ。そんなに時間必要無いしな」
『では、新婦はお色直しのため退場いたします』
会場を長い裾を引き摺ってさんが歩いて行く。スポットライトを浴びて、転ばないようにそうっと歩くさんに微笑んでしまった。
「キレイッスね」
「じゃろ」
ふふん、と仁王先輩はグラスを片手に得意そうに笑う。
「あいかわらずめろめろなんスね」
「そう」
「いや、でも意外でしたよ。就職してからも付き合ってたんスね」
「ああ……一時期別れた事もあったんやけど」
「え」
驚きで、グラスを口にしようとした手が止まった。ずっと、付き合ってきた末の事だと思っていたのに。
「やっぱり、駄目やったね」
俺に、というよりは、自分に言ったみたいな言葉だった。俺はグラスの中身を飲み干す。
「……じゃあ、仁王先輩」
「おう、二次会でな」
('05.5.11)
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