仁王雅治という人は、とてもモテる。
彼女が居てもお構い無しに告白されるくらいに。
03.あ な た の 口 付 け で も
「何を怒っとるんよ」
「だから怒ってないって言ってるじゃないですか」
「じゃあ何で敬語……」
人の気持ちに聡いあなたの事、私が怒ってる訳も怒ってる事も気付いて言ってるんでしょう? その証拠に、雅治は微笑を浮かべたままなのだから。
「なー、ー」
私は振り返って言い捨てる。
「雅治なんて居なくなればいいのに」
彼は虚を衝かれたように、立ち止まった。
「……そしたら、誰も雅治に触れられないでしょ」
さっきだって寄ってきた女の子達と楽しそうに話してた。付き合ってるからって、それに甘えて何でも通じるなんて言わないけど、少しは分かってくれてもいいじゃない。大丈夫じゃないって。
「……あの、さん」
「ああ、もう本当に腹が立つ。何で私が居るのに告白されるの!」
私くらい、直ぐにでも蹴落とせるとでも思っているのだろうか。情け無くて涙が出そうだ。悔しいから絶対泣かないけど。それより何より一番腹が立つのは。
「それでも雅治の事を好きな自分が一番むかつくわ!」
「……すんません」
雅治はぺこりと頭を下げた。私は踵を返し、雅治を置いて歩き出す。彼は直ぐに私に追いつき、手を取った。雅治の手の感触に心が緩む。
「、」
「……分かってるの、雅治は悪くないって」
彼を見上げて、続けた。
「それでも嫌なの! ……っ?!」
雅治は私を抱き寄せた。肩に乗った彼の頭が小さく揺れているのは、笑ってるせいだろうか。
「……あーもー、本当にお前さんは可愛いのう」
「……そんな事言われても騙されないんだから」
「騙すつもりも無かけん、良かよ。まあ、誰に告白されようが、以外と付き合うつもりは無いけん、安心しんしゃい」
疑るような私の視線を受けて彼は笑った。
「あんな告白するようなんは、しかおらんやろうしね」
私は雅治の背中に腕を回し、その腕に力を込める。彼の胸に顔をぐいぐいと押し付けた。自分の行動や言動が今更ながら恥ずかしくなってきて、顔を見られたくなかった。
「もう、やだ……」
「何が」
「雅治に振り回されてばっかりなのに、止められないんだもん……」
止められれば楽になる、と思うのに。
雅治は小さく笑い声を立てた。
「止める必要は無かろう」
「ぐるぐるする自分は嫌なの!」
「俺は好きじゃけど?」
顔を上げると、雅治が優しく微笑んでいる。
「……どうしてそういう事をさらっと言っちゃうの」
「本当の事だから、言うたまでじゃ」
呆気に取られていると、雅治は私に口付けて言った。
「やから、止めるのは諦めんしゃい」
私はため息をついて、彼の胸に顔を寄せた。
……本当は分かってるんだ。
どんなに足掻いても、嫉妬しても、止められないって。
その口付けでも不安になる私を、好きだと言ってくれる雅治が居る限り、この腕を離したり出来ないんだから。
('05.9.21)
m-flo loves Soweluの曲を聴いてたらこんな話が(ページタイトルがその曲名です)。
折角なので強引にお題に添わせてみました!
忍足もそうですが、普段仁王と呼んでいるので、雅治と呼ばせると異様に居た堪れない……。