落花流水・5










お色直しをした二人は各テーブルを回る。二人の手にはそれぞれガラス製のティーポット。中身がテーブル中央の背の高いグラスに注がれるとグラスは青い光を放った。

「うお、スゲエ!」

丸井先輩はそれを見て歓声を上げる。

「最近はキャンドルサービスよりあちらの方が多いそうですよ」
「ああ、火は危ないからな」

柳生先輩と真田先輩がひそひそと話していると、ブルーのドレスを着たさんと仁王先輩がやって来た。

「何だそれ、すげーな!」

丸井先輩の言葉に仁王先輩は笑った。

「これと、の持っとる分のが化学反応を起こしてこんななるんじゃて」
「綺麗でしょう」

さんは仁王先輩と共に液体を注ぐ。テーブル上に、柔らかな青い光が灯った。

「おめでとうございます」
「有難う」

にっこりと笑って二人は他のテーブルに向かっていく。



* * * * *



「何で、言ってくれなかったんですか」

さんは目を伏せ、呟くように言う。

「何か……言い辛くて」

さんも、さんと同じように上に進むと思っていた。校舎が違っても同じ敷地内だからすぐに会えると。そう、思っていた。それより何より、そんな大事な事を本人からではなく人に聞かされたのがショックだった。
俺は二歳も下でさんにしてみれば頼りないだろうけど、付き合っているのに。そういう話も、聞かせて欲しかったのに。

「……頑張ってくださいね」

濁っていく気持ちを押し殺して笑うと、さんは戸惑いながらも頷いた。



* * *



「俺、ちょっと貰い泣きしそうになった」
「マジすか」
「いやー、分かってんだけど。あれは反則だよな」

丸井先輩は、ネクタイを取りながら笑った。花嫁から両親への手紙、というやつだ。さんはぼろぼろ泣きながらそれを読んだのだった。マイクを持ってあげていた仁王先輩は眉を下げ笑みを浮かべていた。見慣れた愛しい人を見つめる視線や、さんが涙混じりに読んだ手紙には、確かにちょっと涙腺を弛まされそうになったけど。

「どうする、まだ二次会まで時間があるな」
「店の方に行くか。ここに居ても仕方無いだろう」
「そうですね。歩いて行ける距離ですし」
「引き出物、軽くて良かったな」
「あれだろ、選べるギフトとかいうやつじゃね?」
「ああ、よく話は聞くよね」

先輩達の話に耳を傾けていると、会場からさん達が出てきた。ふと顔を上げたさんと目が合って慌てて逸らす。次に見た時はクロークからコートを受け取り、外に出て行くところだった。


('05.5.29)


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