***3
「ー?」
「あ、ジローくん」
生徒会室のドアをノック無しに開けると、室内には副会長のしか居なかった。
「あれ、は」
「今職員室に行ってる。すぐに帰ってくると思うよ」
は笑って言った。頷きかけると後ろから声がした
「邪魔だ、慈郎」
「「跡部」くん」
後ろからの声に、と声が重なる。跡部はおれを一瞥した後室内に入っていく。は目を丸くしていた。
「え、どうしたの? 部活は?」
「さっき終わった。これ、この前言ってたやつの修正案だ」
「……あ。わざわざごめん」
「それを言うなら有難う、だろ。に渡しておいてくれ」
「うん……、有難う」
はほんのりと頬を染めて笑った。もも怖そうとか、冷たそう、という印象を持たれているけれど生徒会室に居る時の二人はとても表情豊かだと思う。が綺麗系の顔立ちだとしたら、は可愛い系の顔立ちをしていて、性格も正反対らしいけど二人は仲が良かった。
「あれ、ジロちゃん、もう終わったの?」
「」
職員室から戻ってきたは跡部の姿を室内に認めて目を丸くした。
「珍しい、会長まで居る」
「悪ぃかよ」
「悪くないよ、お疲れさま。ジロちゃんも、お疲れ。ちょっと待っててね」
「うん」
はが差し出した書類を受け取り、捲った。内容を目で追っていたは僅かに眉を寄せる。
「ん? 跡部くん、これ」
「んだよ」
二人は書類を見ながら何やら話し込み始めた。口惜しいけど二人が並んでいるのは絵になる。ちりちりする胸を抑えながら勝手に椅子を引き腰掛けると、いつの間に淹れたのか、がおれの前にカップを置く。
「あ、サンキュ」
「どういたしまして」
湯気の立つ紅茶のカップを手に取ると、そういうのには詳しく無いけどとてもいい香りがした。は跡部とにもカップを渡す。
「ああ、」
「ありがと、」
書類に目を落としたまま、カップに口を付けるは、おれが居る事など忘れてしまったように見えた。
「なるほど、分かった。じゃあこれで仕上げておきます」
「頼む。ああ、あと、」
「え、何?」
はトレイを置いて、跡部の傍に行く。何とはなしにそれを見ているとがにっこり笑って言った。
「ごめんねジロちゃん、待たせて」
「ん」
「今支度するから、もうちょっと待っててね」
「……ん」
言葉にならない言葉は、苦く胸に広がっていく。
('06.3.8)
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