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さー、コンタクトにしねぇの?」

はテレビの画面を見つめたまま頷いた。

「持ってるけど、面倒で。運動もしないからいいの」
「ふーん……」

眼鏡が邪魔だと思うときもあるけど、の顔を隠すには丁度いいのかもしれない。出来れば、おれはみんなからを隠しておきたいから。

「ジロちゃん、これ観た?」
「まだ観てない」
「そっか、良かった」

運動の苦手なは、休みの日でもあまり外に出ない。大抵家で本を読んだり、DVDを観たりして過ごしている。今日は部活が休みだったので、の家に遊びに来たら、案の定、DVDを観ようとしていた。

は、インドアなんだもん、と言いつつ、おれが試合に出る時だけは、必ず観に来てくれる。正レギュラーになった時だって真っ先にに報告に行くと大袈裟なんじゃないかってくらい喜んでくれた。

「どうしたの、ジロちゃん。眠いの? 眠いならここで寝ていいよ」

は隣に座るおれの顔を覗きこんで言う。

「うーん……じゃあ膝貸して」
「いいよ」

は、即答した。
こういう時、おれは全く異性として意識されていないのだなと思う。仮にもおれ達、お年頃な訳で。一応、おれも健全な男だから、口に出来ないやましい感情とか抱いているのだけど。

「毛布、そこにあるからちゃんとかけてね。風邪ひいちゃ大変だから」
「……はい」

そんな事に気付かないの膝に頭を乗せると、くすぐったい、と言って笑った。柔らかいの膝に、おれはこっそりため息をつきながら毛布を被って目を瞑る。毛布は、微かにの香りがした。


***


「そういや、さん、告白されたらしいな」

忍足の言葉におれは摘んでいたクリームコロッケを落としそうになった。

「へー、でも告白されんだな」
「失礼なやっちゃなぁ」

一緒に昼食を食べていた岳人の言葉に忍足は苦笑を浮かべる。呑気に岳人は続けた。

「だってアイツ、怖そーじゃん」
「そうか? そうでもないと思うで」
「……誰に」

ようやく搾りだした問いに忍足はきょとんとした顔をする。

「何がや、慈郎」
「誰に、告白されたんだよ」

自分でも驚く位低い声が出た。忍足は一瞬驚いたように目を見開く。

「あー……、あれや、サッカー部のやつとか聞いたけど」

ふうん、と頷くと、心配そうに顔を覗きこまれた。

「……慈郎?」
「なに」
「……いや、何でもない」

その後、おれは黙って弁当箱の残りを片付ける。味なんて、分からなかった。


('06.3.17)


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