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「亮くん!」

振り返った亮くんは私の姿を認めると目を見開いた。

「……何だ? 何かあったのか? お前がこっちまで来るなんて」

学部の違う亮くんとは校舎が違うから待ち合わせでもしない限り、構内で会う事は滅多に無い。

「あの、お昼を一緒に食べようと思って。それと、」
「それと?」
「……会いたかった、から」

その言葉に彼は言葉を失くす。ぷいと顔を背け、そうかよ、と小さな声で言った。耳が僅かに赤く染まっているのを見て嬉しくなる。あれから五年経ったけど、照れ屋なところは変わらないから。

「あれー、?」

その声の方を見ると、何度か同じクラスになった事のあるが立っていた。そういえば彼女は亮くんと同じ学部に進んだのだった、と思い出していると、の横に居た人が微笑を浮かべ私に会釈した。見た事の、ない人だ。

「久しぶりに会うね。何、宍戸君に会いに来たの?」

からかうような調子のの言葉に、亮くんは更に顔を赤くする。

、オマエなあっ!!」
「いいじゃない、照れなくたって」
「……何や、お揃いやんな」

唐突に後ろから掛けられた声に驚いた。

「え、忍足くん?!」
「おー、やん。久しぶりやね」

亮くんと同じテニス部だった彼とは、亮くんを通じて知り合った。あいかわらず整った顔立ちを柔らかく緩ませ、の横に居た人に笑いかける。

「行こか」
「うん」

彼女は、嬉しそうに笑った。

「じゃあ、また明日」
「うん、またね」

彼女は、忍足くんと並んで校門の方に歩いて行く。どうして忍足くんがここに居るのだろう。彼は確か、違う大学に行った筈では。

「何で忍足くんが……、っていうか、あの人は」
「あの子ね、大学から氷帝の子なんだけど最近忍足くんと付き合い始めたの。今日はもう授業が無いから、お昼を一緒に食べに行くんだって」
「へえ……」

感じの良い人だったなあ、と二人を見送っていると、亮くんから腕を引かれる。

「行くぞ
「え、何処に?」

私の言葉に亮くんは呆れたような顔をした。

「メシ食いに行くんだろ」
「……あ、うん」

私が頷くと、は小さく笑う。

「何か……、あいかわらずだね」
「うるせーな」

亮くんは顔を赤くしたまま言い返す。

「褒めてるんだよ、これでも。じゃ、宍戸君、、またねー!」

は手を振りながら言った。それに手を振り返していると、ほら、と亮くんは手を差し出す。私は自然と浮かんでくる笑みに唇を緩ませながら、その手を取った。





今も変わらず、花びらは胸の水面に降り積もる。





('06.5.23)


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実はヒロインは、忍足夢「たしかな偶然」の宍戸さんの彼女なのでした。
以下、蛇足に付き反転。

「たしかな偶然」を書いている時から宍戸さんを書いてみたいと思っていたのです。彼女のことについて、無意識に書いていたし(伏線……?)。
そんな折、三話目のシーンが降りて来まして、この話が出来ました(宍戸さんの好みなんて大したことじゃありません。<20.5参照)。

書いている途中、ユンナの「オレンジの初恋」という曲を聴いてました。何となく、話に合っているような気がして、タイトルは途中の歌詞から考えて付けました。すごく好きな歌です(バトンで秘密にしていたのはこの歌なのです)。

あと、お花のこと。
花合羽とは、華道でお花を持ち帰るときに使うもの、らしいです。ビニル製が多いのかな?(友達のはそうだった)私は新聞で包んで持ち帰ってたのでよく分からないんですが(実はお花を習っていました)。便利そうですけど、車だから困らないんですよねー。