空に飛ぶ雲・3
「こうして歩くのも久しぶりだな」
「う、うん……」
ブランクがある事を感じさせない蓮ちゃんの話しぶりに私はただ頷いた。
「どうした?」
「な、何でもないよ……」
「……迷惑だったか?」
自嘲的な響きを滲ませた蓮ちゃんの言葉に私は顔を上げる。身長差のせいで、その表情までは読めなかったけど。
「迷惑だなんて、そんな事無いよ! ……私こそ、ごめん」
「何故謝る?」
「だって知られたく無かったんでしょう、私なんかが……いとこだって」
「……誰がそんな事を言ったんだ?」
蓮ちゃんは立ち止まり、呆けたように言った。私も足を止める。
「え、だって、丸井くんとか知らなかったみたいだし……」
「聞かれなかったからだ、と言っただろう? 現に仁王は知っていた」
「う、ん、そうなんだけど」
「それに、私なんか、というのは感心しないな。昔も今も、は大事ないとこだ」
さらりと告げられた言葉に、私は胸が一杯になって、何も言えなくなる。
「気にせず、また家に来るといい」
「……いいの?」
「勿論。母さんも姉さんも喜ぶしな」
私は大きく息を吐く。
「何か……遠くなっちゃった気がしてたの」
「俺こそそう思ってたさ。目が合っても逸らすし、会いに来ないし」
そう言って蓮ちゃんはため息をつく。慌てて私は言った。
「だって、蓮ちゃん、部活で居なくて、」
「……久しぶりだな」
蓮ちゃんは、笑った。
「え?」
「その、呼び方」
「うん……。嫌じゃないの?」
「ああ」
優しく笑ってくれるから、私も笑う。
「良かった」
「俺もだ」
私は見上げて首を傾げたけど、蓮ちゃんは答えなかった。ふと思い出して口にする。
「そう言えばマネージャーさんも、私がいとこだって知ってたね」
「言ったからな」
「……何で?」
「と同じクラスだろう? の事を訊いた時に言ったんだ」
「何訊いたの……」
「大した事じゃない」
「気になるよ」
「気にしなくていい」
蓮ちゃんが、こういう言い方をする時は、言わないって決めた時だ。私は諦めてため息をつく。
……ま、いいか。
以前と変わらず相手をしてくれるから。蓮ちゃんの傍に居るのはやっぱりどきどきするけど、話せて嬉しい事の方が勝る。浮かんでくる笑みを抑えずに歩いていると、蓮ちゃんが笑ったような気がした。
('04.10.9)
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