クロゼットフリーク・4
五限目をさぼって屋上に居たらがやってきた。俺の姿を認めると目を丸くした後微笑み、横に座る。
「ええの?」
「何が?」
「学校では、そのキャラで行くと違うん?」
そう言って、きっちり編んである三つ編みに触れると、手を振り解く事も無くは笑う。
「絵に描いたような優等生キャラ?」
「そうそう」
「これにはちゃんと理由があるのよ。
寝不足だから眼鏡で、パーマ隠しの為に三つ編みにしてるの」
「寝不足て……、そこまでして夜遊びせんでもええやん」
お茶を飲もうとペットボトルの蓋を開けながら言った。は頬に手を当て少し考えた後、口を開く。
「私、するの好きなのね」
ぶ、と思わず飲んでいたお茶を吹いてしまった。
「大丈夫?」
きょとん、とした顔ではハンカチを差し出す。
それを受け取り、促した。
「いや、大丈夫やから。続けて」
は自分の両手に視線を落としたまま口を開く。
「するのは好きだけど、誰でもいい訳じゃなくって、それなりに好みはあるんだよ。とりあえず、したい人と、出来ればいいかなーって」
「付き合いたいとか無いん?」
「そうね。大体一回しただけで彼女扱いされてもねえ。私は躰目当てだから、とっても困る」
「か」
「か?」
「……あんたホント男前やな」
「そう? どうして男の人って性欲が自分達だけのものって思ってるのかしらね?」
心底不思議そうには言う。
「女にも性欲はあるのに。まあ、こういう考え方だから、付き合ったり出来ないんだろうけど」
俺は壁に凭れ空を見上げた。爽やかな青空の下に不似合いな、ふしだらな会話。あっけらかんとしたの口調に、ふと思いついて質問した。
「じゃあ、付き合った事は無いん?」
「あるよ」
まじまじと横顔を見つめると、こちらを向いて、に、と笑った。
「中学生の時に、姉の友人と。その人と別れてからは付き合った事は無い」
「何で付き合わへんの」
「侑士こそ。何人からも告白されてるのにどうして?」
「何人か付き合うたけど……面倒になってもうてな。まあ俺の事はええねん。何でや」
「付き合いたいと思う人が居ないから、かな」
「……やから、ヤリまくっとんの」
酷い事を言ったと思ったのだがは笑う。
「そうだよ。そういう女なんだよ、私は」
朗らかな口調と笑顔が、逆に痛々しい気がして何も言えなくなった。
***
部活に向かおうと校舎裏を通っていると男女が向かい合っていた。
……お、告白かい。
目を凝らすと、片方はだった。男が何か言っているのを困惑して見上げている。やがて、は首を横に振り、ぺこり、と頭を下げて、その場を離れていく。何となく、その背中を追った。校舎に入っていくを呼ぶと、振り返った彼女は微笑んで首を傾げた。
「どうしたの、部活は?」
「……告白されとったやん」
「ああ、見てたの」
さらりと言ってのける彼女に、何故だかむっとした。
「何で断ったん? 誰でもええんかと思っとったわ」
「心外ね」
言葉ほど思ってないようには笑う。
「じゃあ、何で断ったんや?」
「したいと思えなかったから」
「なあ……それ、その基準、間違っとらんか」
「何が? 顔が可愛いとか身長が高いとかと同じレヴェルの話でしょ?」
「まあ、そうかもしれんけど」
「それに、私、彼を好きにはなれないよ」
その言い方があまりにきっぱりとしていたので訝った目で見た。は、ふ、と眼鏡の奥の目を細め悪戯っぽく笑う。
「……どっちにしても侑士に関係ないでしょう。心配しなくても相手はするよ?」
その物言いに、ひどく腹が立った。腹を立てる筋合いなど、何処にも無い筈なのに。
「……じゃあ、今直ぐでも?」
意地悪く言うと、は目を瞠った後、艶然と微笑んだ。
「場所、移しましょうか」
空き教室に入って性急に抱き合う。下着を取り、壁に押し付け、片足を上げさせた。膝裏を支え突き上げる。十分に濡れてない其処は悲鳴を上げる。それでも出し入れしているとスムーズに動かせるようになった。甘い声を漏らしは口付けてくる。応えるように舌を絡ませた。きつく編まれた三つ編みと、緩めなかったタイとシャツが目に入る。いやらしく響く水音が耳にこだまする。ここが何処で何をしているのか。何もかも分からなくなってきて、どうでも良かった。ひどく背徳的で甘美な、これ。いけない事ほど快感を促すのは何故だろう。躰から意識が剥離していく。感じ始めた違和感に気付く間も無く。何に対して憤りを感じてるのか分かる間も無く。
('04.10.24)
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