期間限定・4










「全然来なくなっちゃったなあ……」

岳人はため息をついて言う。あれから、二日が経っていた。誰を指して言っているのか分かり、口を開く。

「そういう、約束やったからな」

背を向けた瞬間翻ったスカートから伸びた白い足。磨かれたローファー。背中で揺れる髪は、染めてないのに太陽の下で見ると少し茶色くて。手を伸ばそうとして躊躇った自分の心と共に何度も思い出す。

「何の話ー……?」
「うわ、ジロー、居たのかよ!」

ソファの後ろから現れた慈郎に岳人はびくりと体を震わせた。

「五時限目終わった後眠くて、それからずっと寝てた〜……」

慈郎は目を擦りながらのんびりと言う。

「部活始まるで。早よ着替えんと」
「うん。で、何の話」
「……

躊躇うように岳人が言うと慈郎は、ああ、と頷いた。あれだけ騒がれていれば、そういう話に疎い慈郎も聞いた事があるだろう。着替えていると、慈郎は口を開く。

「おれも、と同じクラスなんだけど、」

そう言ってちょっと口籠る。

「そうか。元気にしとるん? ……ていうか親しいんやな」

彼女の事を、一度も呼んだ事の無い下の名前で呼んだので少し驚いた。

「だってのしんゆうだから」

、とは慈郎が三年になってから付き合っている彼女だ。二人が並んで歩いているのをよく見かけていた。

「昨日は休んでー、今日は目が赤かったよ。笑ってたけど」
「……へえ」

酷い事を言った後でもけろりとしていたのに。そう思って自己嫌悪する。そんな俺を気に留めず、慈郎はわざとらしく口を両手で押さえた。

「……っあ、コレ言っちゃダメだった」
「え?」
「きっと忍足くんは気にしてしまうだろうからってが言ってたの」
「―――は?」
「優しい人だから、何とも思ってない相手でも気にしてしまうと思う、って」

眉間に皺を寄せると慈郎は笑った。

「気になる?」
「……何が」
のこと」
「……別に、」

そう言いかけると慈郎は笑って口を開いた。

「おれさー、何で付き纏わせてとかゆったのって訊いたんだ」

俺は、息を呑む。
慈郎は堰を切ったようにぺらぺらと喋り出した。

「告白してもきっと私の事を知らないと思うって。だから、好かれなくてもいいから、せめて記憶に残る事してやろうって思ったんだって」
「でもいざとなるとどうしていいか分からなかったって。すっごく後悔したって。とりあえず、気持ち悪い女としては記憶に残れそうだけどって」
「苦しかったって言ってたよ。近くに居ると見えなかったものが見えて、望んでしまいそうになったんだって。冷たくあしらわれるより、傍に行く事がつらかったって。見ていたいのに、早く一ヶ月過ぎないかなって、そればかり考えてたって」
と何度も、もう止めなよ、って言ったけど、言った事はやらないとって、止めようとはしなかったよ。そういうとこ、変に意志が固いんだ」
「おれ、、好きなの。が一番だけど。、すげえ優しいし格好良いんだよ。凛としてる、っていうの? がそう言ってた」

覚醒した慈郎の言葉の数々に俺はため息をつくしか出来なかった。

「……ちゅうか、それは言うな、て言われてた事なんやないの」
「そー。でも、誤解したままだと嫌だなーって思って。……余計嫌になった?」

慈郎は俺を心配そうに見上げる。

「……慈郎、の携帯番号教えてくれるか」

その言葉に、慈郎は嬉しそうな顔をして携帯を取り出した。


('05.1.22)


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