トラフィックアクシデント*2










姉は私を可愛がるけど構い過ぎない人で、私が夜出歩いても何も言わなかった。ただ、避妊と病気には気を付けなさいよ、とは言われていた。それもどうなんだろうって気はするけど。
夜遊びしてて思ったのは、セックスって簡単なのだなあという事。そこに感情を介在させなければ相手は簡単に見付かる。あまり知らない人との初めての食事より、簡単だ。

姉の教え通り、妊娠と病気を避けるために積極的に動いた(そういう技は姉に教えて貰った)。奔放に振舞えば振舞うほど、男の人は私を怖がって二度と誘わない。そういう人ばかり選んでいたのもあるんだろうけど。
たまに付き合おうとか言われたけど、そんなのに興味は湧かなかった。だって、その行為が目的であって、恋人同士のお付き合いなんて要らなかったから。どうせ終わりが来るんだもの。そんなものは、要らない。

私は。
好きな人には私を好きでいて欲しい。めろめろにされて、めろめろにしたい。片想いなんて、論外だ。私が好きならいい、なんて思えない。人に言っても信じてもらえないかもしれないけど、私は恋愛至上なのだ。好きな人が出来るとその人が私の世界の全てになる。その人無しでは生きていけなくなる。だって、その人は、私の全てなんだから。
……だからこそ、簡単には恋に落ちるわけにはいかない。
そう、思ってた。


***


「じゃあ、ウチ来るか」

薄く笑んだその人の眼鏡の奥の瞳は、ひどく冷たくて。
ああ、この人なら大丈夫、と思った。付き合おうなんて面倒な事は言わないだろう。躰だけの方が楽だって、この人も思っている。それは、確信に近かった。

「うん」

だから、私は安心して微笑んだ。

*

躰を重ねた瞬間に思ったのは「当たりだ」ということ。
全身がぞくぞくするような感覚に私は笑った。今日初めて言葉を交わし、躰を交わすというのに。彼の指は慣れた手つきで私の躰を辿り、とろけさせる。
……顔も好みだし、ラッキーだったなあ。
経験を重ねて分かる事もある。やっぱりコレにもうまい人と下手な人が居る。彼は間違いなく前者だった。何度も襲い来る快感の波に私は意識を手放した。


眠ってしまった彼、侑士の腕から脱け出した。服を着て、すっかり化粧のはげた顔にグロスだけ塗る。熟睡する侑士の顔は幼く、さっきまであんな事してたのが嘘みたいだ。ふと悪戯心が湧いて、彼の頬に口付ける。残ったのは、きらきらと光る赤いグロスのキスマーク。笑いを堪えてそっと玄関に向かった。

*

それからクラブで会う度に彼は私を誘った。
……躰の相性がいい人って居るんだ。
肌に吸い付くみたいに私の躰を撫でる指。上から落ちてくる吐息と汗。最中に必要以上に喋らない事も、とても気に入っていた。何より、侑士とする時は、演技する必要が無かった。


('06.2.06)


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